う方針でやって見度いものだ、それで相当の改良進歩が行われ、収支経済もつぐなうという道がなければなるまいと考えて居る。
三十一
百姓弥之助はうどん[#「うどん」に傍点]を作る事も、そば[#「そば」に傍点]を打つ事も心得て居る。
うどん粉というものは、以前は小麦を水車にやって挽《ひ》かせたものであるが、近頃は電燈応用の製粉所へやれば、手取早く粉にして呉れる、この水車製粉と電力製粉とを、比較研究して見たわけではないが、昔の水車製粉の甘味は何分忘れられない、米のつき上げに於てもそうである、砂を入れるとか入れないとかいう問題は別として、水車づきの米が何分安心の出来る気分を与える。
手打うどんを作る段取りは、小麦粉を若干すくい取って、こね[#「こね」に傍点]鉢の中に入れ適当にこね上げて、それを三尺四方程ののし[#「のし」に傍点]板の上にのせ、めん棒でのし広げて、畳んで切って熱湯の中へ入れて、ゆで上げれば、それでうどんは出来上ったのであるが、これをざる[#「ざる」に傍点]に取って別に汁をこしらえて、盛りを食べるようにして食べるのが普通の方法である。それからこの地方ではもう一つ
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