がいよいよ低下するばかりです、どうしても肥料に金を懸けなければ駄目です」
「肥料をやらないで野育ちにという訳では無い、成可《なるべ》く金肥をつかわないでやれないか如何《どう》かという問題である、出来るだけの肥料は自給して、金肥をつかわない方針でやって行く方法は無いかという問題だ」
「そうですね、それは無い事もないです、肥料を多く使わず土地を痩せかさないで、相当の収穫を見て行こうというには、それはなる可く土地を休養させるという方法をとる外はないでしょう」
「そこです、その土地を酷使せず適度の休養を与えて、そのかわり金肥を節約して、農業がやって行けないものかどうか、昔の農業はそれであったのでしょう」
「そうすれば、士地と肥料の調節は出来るとして、問題はその土地ですね、今の農家は適度の休養をさせる程、土地の余裕を持ちません、その点は昔のように、人口が少く比較的に土地が豊富であった時代とは違いますからね」
弥之助は心|密《ひそ》かに考えて居る、どうか自分は一つ、その農業の商業化でなく、農業の純農業の立場を行って見度《みた》い、つまり「土地を酷使せず、相当の休養はさせるが、美食は与えない」とい
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