、ジャガタラ薯《いも》というのがござんすが、あれは近ごろ南蛮から来たのだそうですが、結構たくさん取れて穀類の代りになります、あれをお植えなさい。
 そうして、用心をして置いて、いざ饑饉という時には、その貯えを大切に、控え目にして食べるです。そうすれば、悪食《あくじき》をしないでも次の実りまで、きっと凌《しの》げるものでござんすよ。でござんすから二宮先生は、饑饉の年でも決して、草の根や木の皮を食えとはおっしゃいませんでした。心がけさえして置けば、どんな饑饉にでも五穀を食いのばして行けるものでございます。饑饉の時は、なんでも食べられます、食べなければならない場合もあるでございますが、少しの間はいいが、長くなると病気になります。
 こういう説教を与八が試みました時に、慢心和尚が来合わせて、次のようなあいづちを打ちました。
 そうとも、そうとも、与八の言うことと、二宮尊徳の言うことは間違いはないぞ、饑饉は怖いぞ、用心して五穀を貯えろよ、草根木皮は食うなよ。天保の饑饉の時、わしは江戸で見たがな、なにしろ作の本場の百姓でさえ、食う物がなくて餓え死ぬ世の中だから、町家ときては目も当てられなかったよ。
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