見ていてごらんなさい、鉄と石炭が欧羅巴を進歩せしめたというのは、近眼の見ている虹です、やがて、これがために亡びますよ、いったい、土地に埋蔵してある天与の物質を掘り出して、それを人間同士|殺戮《さつりく》の道具に造るなんていうことが、罰が当らないで済むものですか、やがて、欧羅巴がいい見せしめです、東洋の方々よ、東洋は欧羅巴に比べると、遥かに偉大なる宗教、深遠なる哲学を持っています、この産物は、鉄と石炭の産物とは比較にならない、東洋人はその偉大なる宗教と哲学に従って行けば、安全なのです、決して、鉄と石炭の文明に眩惑されてはなりませんよ」
 こう言われて、駒井甚三郎は、何か自分の弱味に籠手《こて》を当てられたように感じました。この立論が偏窟であるないにかかわらず、ただ何かしら、自分の弱点を突かれでもしたように感じました。

         五十三

 こういう頭から出て、とどまると言い、出ると言う以上は、力を以て引留めることの限りではないと、駒井甚三郎もややにさとりました。
 そうして、暫く沈黙して考えさせられざるを得ないものがありましたが、
「君が欧羅巴文明を否定するのは、君一個の意見と
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