女王は、剣を以て人を殺すということをしない、血を見て飽くという手数を尽さない、けれども、人を殺して血を見るという性癖は一つです。その一念がようやく増長しつつあるように見受けられる。
 この女王様の第一の利刃《りじん》は軽蔑です。この女王は、ほとんどあらゆる現象に対して、この女王が発する最初の挨拶は軽蔑であって、最後の辞令も軽蔑でないということはない。いかなる種類の人でも、この女王の軽蔑に価しない人はなく、いかなる種類の物象でも、この女王の軽蔑を蒙《こうむ》らぬ物象はない。
 胆吹の山寨《さんさい》は、今や彼女の軽蔑のために吹き飛ばされてしまいました。自ら築いたものを、自ら軽蔑するのだから、これは手の附けようがありません。
 今や、第二の光仙林を造ってはや、これをも軽蔑せんとしている。国宝級、重美系の芸術も、ようやく彼女の軽蔑から逃れ難く、光悦を集めながら、はや光悦を軽蔑しきっている。
 物を見に行くというのは、彼女にあっては、物を軽蔑しに行くのです。意志と感情を発散せぬものに対してすらそれですから、悪呼悪吸、もしくは愚呼愚吸のほかの何ものでもない人間共の存在に対する軽蔑が、骨髄を埋めて
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