いて見ると、案外にも門は閉されて、全く人の気配がありません。
 推《お》せど、叩けど、おとなえども、応と答えるこだまはなく、全く無人の境と思いましたから、兵馬は、身軽く塀《へい》を乗越えて、上平館の境内へと侵入してみましたけれど、誰とて咎《とが》めるものはありません。
 はて、この分で見ると、ここははや解散したあとだ。つい近頃までは人の出入りの相当繁かった気配は充分ですけれど、現在は全く引払って、さらに人跡をとどめていないことは、小径に生ずる草、立てこめる気分の荒涼さでもよくわかります。およそ人の住むべき家に、人の住まないほど、すさまじい光景はないものの一つです。本来、未開の地には未開の処女性があって、人の官能を潔《いさぎよ》くするものですけれども、一旦、人が住んで、そのまま住まずとなって打棄てられた光景ほど、うたた物の荒涼と悲哀とを漂わせるものはありません。
 その気分に打たれた宇津木兵馬は、ははあ、もうこの一味は解散したのだな、人は解散したけれども、家屋敷はもとのまま、足を踏み入れるに従って、あちらに一棟、こちらに幾軒というほどに、建築の生《なま》なのに較べて、宏壮な規模が徒《いた
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