二十九
しばらくの間、たぎり流るるような烈しい沈黙が、無人島の、今は無人でない処女嶋の、椰子の林の木の間につづきました。
駒井のかくまで、技巧ならぬ技巧をこらして打ち出でた応対に、お松としては返事がありません。返事ができないのです。できないのは、あり余って、そうして、その言葉を見出すに苦しむのでありましょう。
全くこれは、この純良忠実なる処女を驚かすに充分なる申し出でありました。尋常の場合、当然の立場でいてさえ、女性として、この申し出に触れた時は人生の最高潮であって、これに動揺しない婦人は一人もあるべきはずでない。驚くなと言っても、驚かずにはいられないはずのものです。お松の心の激動と、その激動を持ちこたえるものごしは、駒井に正面から見下ろされてのがるる由がありません。生憎《あいにく》にも、木蔭を洩《も》るる月の光が、また直下にこの処女に射向いて、絶体絶命の手づめを見せているのです。
こうなった時に、お松は、これこそ驚くべき勇気を以て、少しもたじろがずに駒井の面《かお》を見上げて、それに劣らぬ平静を以て答え得られたことが意外です。何か力あって、この女性を後
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