と、交代に手分けをしなければなりません。
それから、附近を詮索《せんさく》して水道の工事があり、やがて開墾にとりかかって、草木を焼き、或いは伐《き》り、開くあとから種を蒔《ま》きはじめました。幸い、農事にかけては七兵衛入道が万事本職で、熟練した指導ぶりを見せていますから、仕事の捗《はかど》ること目ざましきばかりです。
そのうちにも、休息と、慰安の時間は多分に与えられて、仕事の余暇は、おのおのその楽しむところを発揮するの自由を与えられましたから、ほんとうにすべてがトントン拍子で、幸先は決して悪いものではありません。
駒井甚三郎は新館の一室を書斎とし、一室を寝室とし、食事は多勢と共に食堂兼用の広間ですることもあれば、書斎に取寄せて済ますこともある。駒井の次の一間は、秘書役のお松の部屋です。
お松は、駒井の秘書と、内政と、その事務の助手のすべてを兼ねて、なくてならぬ人です。
駒井が研究に没頭して事務に遠ざかる時は、お松でなければ駒井に代って取りしきる人がありません。田山白雲は豪放|磊落《らいらく》を以て鳴り、このごろは、その附近の異風景の写生に専《もっぱ》らで、義務として開墾に応分
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