でにここで申し上げてみたい、無論、御採用になるとならぬは、あなた様の御意《ぎょい》のままで、お気に召さなければ、第二、第三と、幾つでも立案してごらんに入れますつもり。その第一案を申し上げてみますると――この第一案と申しますのは、第一等の立案というわけではございません、最初、第一に思いついたという軽い意味のものでございますから、そのおつもりで……」
「遠慮なく申し聞かせていただきます」
「まず、この山科の光悦屋敷、改めて申しますと光仙林をお手に入れましたのを機縁と致して、こういったような計画はいかがでございましょう」
 光仙林をお銀様の手に帰《き》せしめたのも不破の関守氏、これを根拠地として、お銀様をして、何事をか為《な》さしめんとするのも不破の関守氏であります。

         十九

 ここで、不破の関守氏の提案というものは、次のような内容でありました。
 この山科屋敷が手に入ったを機会として、ここで国宝、或いは重要美術に準ずる書画と骨董類《こっとうるい》を大量に蒐集して置きたいという極めて罪のない事業であります。
 それというのも、前提の天下の形勢論が、やはり基礎を致しているの
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