れば、毛唐は誰にでも金を貸すのか」
「洋学が出来て、御身分の保証がおありなされば、何万、何十万、何百万とまとまったお金を、右から左へ貸してくれますのよ」
「それはまた桁《けた》が大きいなあ、何万はいいが、何百万は事が大きいぞ」
「まあ、お聞きなさい、決して夢じゃありませんから」
ここまで、立ち姿、襖越《ふすまご》しで話しかけていたお絹が、ずかずかと入りこんで来て、神尾の火鉢の前へ坐り、無雑作に白い手をさしのべて神尾の拳《こぶし》にさわるほど、親密に意気ごんで話を持ち込みました。
七十二
お絹は白い手を火鉢の前にかざして、神尾の手をなぶるような仕草をしながら、
「ねえ、あなた、小栗上野様《おぐりこうずけさま》を御存じ?」
「何だい、また人別《にんべつ》が変って来たな、今は駒井能登の戸籍しらべだが、今度は小栗上野と変って来た!」
「小栗様、御存じなの?」
「知ってるよ。知ってると言ったところで、親密という間柄ではないが、若い時はおたがいに見知り越しだ」
「では、もう一つ、勝安房様《かつあわさま》を御存じ?」
「勝――それは知らん」
「小栗上野様と、勝安房様と、どっ
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