せんからね。駒井様の隙なんかは、同情して上げてよい隙なんでしょう。過ぎたことは仕方がありませんね。それにしてもあの方、今どうしていらっしゃるでしょう」
「イヤに今日に限って駒井に気を持つじゃないか」
「少し伺いたいことがありますから」
「ふむ、いまさら駒井に、何を聞きたい」
「あの方、たいそう洋学がお出来になるんですってね」
「うむ、そのことか。洋学、あれは出来るよ、あれが表芸なんだ、洋学だけは相当にやれると自他ともに許していたよ」
「惜しいわね」
「何が惜しい」
「それほど洋学がお出来になるのに」
「洋学なんぞは、毛唐の学問だ」
と、神尾が取って投げるように言いました。洋学が毛唐の学問であることは、神尾に聞かなくても、お絹でさえよくわかっている。
「惜しいわね、それほど洋学がお出来になるのに」
「何が惜しいんだよ」
「でも、当節、洋学がお出来になれば、お金儲《かねもう》けはお望み次第なのに」
「洋学が出来れば金儲けは望み次第? それで駒井のいないのが、宝の持腐れだというコケ惜しみか」
「そうよ、わたし、このごろ、つくづくそう思いますわ、もし、わたしに少しでも横文字が読め、達者に異人さ
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