だけの内容を備えていることは事実で、そうして読み進む文面を、順を逐《お》って複写してみると、あれからの勝のおやじの自叙伝が次のようになっている。
[#ここから1字下げ]
「ソレカラ、ダンダン行ッテ、大井川ガ九十六文川ニナッタカラ、問屋ヘ寄ッテ、水戸ノ急ギノ御用ダカラ、早ク通セト云ッタラ、早々人足ガ出テ、大切ダ、播磨様ダトヌカシテ、一人前払ッテオレハ蓮台《れんだい》デ越シ、荷物ハ人足ガ越シタガ、水上ニ四人並ンデ、水ヲヨケテ通シタガ、心持ガヨカッタ」
[#ここで字下げ終わり]
勝麟太郎の親父――小吉ともいえば、左衛門太郎ともいう馬鹿者が、子供の時分から、箸《はし》にも棒にもかからない代物《しろもの》で、喧嘩をする、道楽をする、出奔をする、勘当を受ける、それもこれも、一度や二度のことではない。そのたわけ物語の書出しに、
[#ここから1字下げ]
「オレホドノ馬鹿ナ者ハ世ノ中ニモアンマリ有ルマイト思ウ故《ゆえ》ニ、孫ヤ彦ノタメニ話シテ聞カセルガ、ヨク不法モノ、馬鹿モノノイマシメニ話シテ聞カセルガイイゼ」
[#ここで字下げ終わり]
と言っている通り、馬鹿も度外れの馬鹿になっている。しかし家は剣道
前へ
次へ
全402ページ中291ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング