目《いりめ》もあるだろう、使えば使い栄えのする金になるのだから、この際、君の用意のためにするがよい――と事をわけて言い聞かせた上に、万一、君が受けないといっても、この種類の金を、拙者が有難く頂戴に及んで、いい気持で遣《つか》い歩けるかどうか考えてみるがよろしい、君がつかえば生きるが、拙者が遣うと男が廃《すた》る――というようなことまで説いて聞かせた上に、
「そういうわけだから、君はこの金でしかるべき芸妓家《げいしゃや》の株を買うようにし給え、それで余ったらば――」
と言って、極めて分別的な、しかも算盤《そろばん》に合う計画を立てて福松に示したのは、このあわら[#「あわら」に傍点]というお湯は、今こそ地中に埋れてはいるが、ゆくゆくこれが世に出ると、北国街道の要害でもあり、絹織物の名産地でもある福井の城下に近い形勝を占めたところだから、大いに繁昌するに相違ない。で、今のうちに多少なりとも地所を買い求めて、ゆくゆく温泉宿でも経営して、老後の安定を心がけてはどうだ。
 こういう分別的な、算盤に合う提案をしたものですから、それが福松をうなずかせもし、安心もさせ、あなたというお方は、ほんとに感心な
前へ 次へ
全402ページ中257ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング