けんぎょう》のほかにあり得ないと思われるが、ただ、その声の出るところが、いずれの方面だか見当がつきません。
 いま聞いた発端だけによって判断すると、それは東西南北のいずれより起るのでもない、どうもこの地下のあたり、柳は緑、花は紅の辻の下から起り来《きた》るものとしか思われないことです。この下を二人が悠々閑々《ゆうゆうかんかん》とそぞろ歩きながら、前なるは弁信法師、後ろなるはお銀様が、「易」というものを話題として、説き去り説き来ろうとする形勢を感得したものですから、せっかく、歩み出した竜之助が、また歩みをとどむるのやむを得ざるに立ちいたりました。

         五十二

 宇津木兵馬と福松との道行《みちゆき》は彼《か》が如く、白山《はくさん》に上ろうとして上れず、畜生谷へ落ち込まんとして落ち込むこともなく、峻山難路をたどって、その行程は洒々落々《しゃしゃらくらく》、表裏反覆をつくしたような旅でありましたが、日と夜とを重ねて、ついに二人は越前の国、穴馬谷《あなまだに》に落ち込んでしまいました。
 二人が穴馬谷へ落ち込んだということは、この場合、ざまあみやがれ! ということにはならない
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