総裁ということにでもなるのか」
「いや、それが成功したからとて、いちずに土佐が時を得るというわけには参るまい」
「失敗しても、土佐は得るところがあって、失うところはないのだ」
「だが、諸君、心配し給うな、そんな改革が、仮りに実行されるとしてみても、成功するはずがないから、心配し給うな」
「どうして」
「たとえばだ、君たち、ここに拙者が坐ったままでいて、そうして、この畳の表替えをしろと言ったところで、それはできまい、畳の表替えをしようというには、そこに坐っている者から座を立たねばならぬ、坐っている奴が、座を立つことをおっくう[#「おっくう」に傍点]がって、このまま表替えをしろと言ったってそりゃあ無理だ、家の建替えや根つぎにしてからがそうだろう、天下のことに於てはなおさらだ、攻撃をする、改造をするという時に、中に人間共が旧態依然としてのさばっていて、それで改造や改築ができるか、現状維持をやりながら維新革新をやろうとしたって、そりゃ無理だよ、そんなことができるくらいなら、歴史の上に血は流れないよ、そんなおめでたい時勢というものは、いつの世にもないよ」
 こういった反駁《はんばく》が、有力な確
前へ 次へ
全402ページ中213ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング