諸藩士、無籍の修行人でもなし、いずれも、フリーランサーであるに相違ないと思われる。フリーランサーは英語であって、当時日本の流行語で言えば、脱走者とも、脱藩人ともいう。
 つまり、諸藩を脱走して、おのおのその懐抱するイデオロギーによって自由行動をとる、当時の志ある青年武士である。藩籍にあって知行をいただいていては自由の行動が取れない、よし自由の行動が取れるにしても、その行動が藩主の身上に影響を及ぼすところをおそれて、好んで藩を脱して諸国を放浪して、大言壮語することを職としていた筋目の通る溢《あぶ》れ者《もの》が、当時の社会には充ち満ちておりました。
 期せずして、これらのものが会見して、語り出す日になると談論風発です。天下国家のことから、経世済民のことから、人物|汝南《じょなん》のことから、尊王討幕のことから、攘夷清掃のことに及んで、いつも火の出るような言論戦が行われることはあたりまえであるが、今日は、話のきっかけが見て来た修羅場のことからはじまり、その内容の叙述について、もはや、かなりの弁論時間を要したものですから、架空の議論には及ぶ余暇がなかったのですが、ここで右の叙景談が一応終りを
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