、いま二人の恋物語を語るにつれて、情がうつって昂奮して来る様子と言い、どうやらお前さんも只者《ただもの》ではないようだ、まだ枯木となって、世の春にそむく年頃でもあるまい」
と言って、近寄って、その手にさわってみると、どうしてどうして、その手がまるく肥えていた。
「あなた様、怪体《けたい》なことをなされますな」
と尼さんは言ったが、驚いて飛び上りもせず、そのさわられた手を引っこめもしなかった。
果して、相当|海千《うみせん》の女であったよ、わしが一人でさまよい込んだのを、いいかげんの相手と、つかまえて放さず、朝霧と重清の恋物語に持込んで、情をうつしたのは、まあ相当の手とり者だった。おかげで、おれも無益の殺生《せっしょう》をしないで済んだというものだが、いったい、京都は女の多いところだと、そもそもこの時から嬉しくなりはじめたのは馬鹿な話さ。
四十四
破産者の笑いそのもののうつろな笑いのうちに、机竜之助は、仰向けに横になって気を吐いていたが、もう気の利《き》いた化け物は引込んでしまい、よよと泣く声もなければ、わあわあと合わせるバスもなく、柱も、長押《なげし》も、すっ
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