の三面種に及ぶまで、思いきって内秘を発《あば》き立てて、汚ない哄笑で終ることもある。そういうような空気であったのに、今日は――ではない、もう今宵と言っていい時刻なのに、人っ子ひとり来ない。つまり、出て行った壮士は一人も帰らず、とぶらい来《きた》る風客というものも一人も見えないのだから、空気が手持無沙汰で、人にとっては一種の荒涼な気が襲って来るのです。
 それでも、常の通り、ちゃあんとお茶弁当の接待は整っている。竜之助は部屋の一隅の洗面所へ行って、簡単に洗面を果してから、ひとりその食事にとりかかりました。
 弁当を食べ、お茶を飲み了《おわ》るまでに相当の時間を費したけれども、誰もまだ一人も帰って来ない。
「壮士ひとたび去ってまた帰らず――か」
 竜之助は、思わずこんな独《ひと》り言《ごと》を言うほどに、心に荒涼を感じました。
 実際、ここに出入りしていた者共は、新撰組から分離、或いは脱走して御陵隊へ走った壮士ばかりであった。つまり、ここはそれらの壮士の控所に当てられていたのですから、竜之助が、一人も帰らないその控所に取残されて、「壮士ひとたび去ってまた帰らず」と言う口ずさみの感じも、偶然
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