っしのっしと這い出して来たが、ドコへ行くかと見ると、橋杭《はしぐい》の太いのにとっつかまり、それを、なかなかの手練で攀《よ》じ上って、橋の上へ出ようとする。
逃げ出したのではない、轟《とどろき》の源松これにありと知って、風を喰《くら》って逃出しにかかったのでないことは、その気分ではっきりわかる。つまり、あいつらは、この老練な猟師が網を張っているということを少しも知らない。ちょっと何か用達しに出かけて、やがてまたこの巣へ舞い戻って来るのだという気分は、源松にもはっきりと受取れるが、さりとて、舞い戻るまで、空巣へ網を張って株を守るの愚を為《な》すべきではない。源松も、急に手近な柳の木へ上手に攀じ上って、彼等の行動を注意して見ると、橋杭から橋板の上まで攀じ上った二人のお菰は、橋の東詰の程よいところまで来るとしめし合わせて、一方は橋の南端へ、一方はその北端へ居を占めて、そこの橋の上に横になって、お菰をさし繰り上げて自分の身体《からだ》を覆い、そこに平べったくなって寝込んでしまったのです。
ははあ、こいつら、穴の中よりも板の上が寝心がいいと見えて、お寝間直しと洒落《しゃれ》こんだな、とにかく
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