かり》の不意に消えたことは、乱軍の休戦ラッパとなり、同時にまた、あの強《こわ》もてのような、変な空気ではじめた余興の見事な引上げぶりに終りました。
いい汐合《しおあ》いに引上げたものだ、まさに甲賀流の極意! 村正どんは床の間へ帰って、長煙管でヤニさがって、それから腮《あご》を撫でていると、あとからあとからと、創痍満身《そういまんしん》の姿で聯合軍が引上げて来る。そのあとから仲どんが、衣裳と帯とを揃えて持って来る。
みんな疲れ果てて、もう愚痴も我慢も出ない。せいせいと息をきって、眼を見合わせて、息をついているばかりだが、それでも皆、昂奮しきって、愉快な色が面に現われている。
村正どんもまた、花合戦よりも蕾合戦《つぼみがっせん》のことだと内心得意がって、この清興(?)を我ながら風流|事《こと》極《きわ》まれりと納まっている。子供を相手に、こういう無邪気(?)な色気抜きの遊びに限る、こういう遊びぶりこそは、色も恋も卒業した通の通でなければやれない、という面つきをして得意満々の体に見えたが、しかし、もう時刻もだいぶおそい、この辺で、この清興に疲れた可憐の子供たちを解放して、塒《ねぐら》に
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