だ、これは」
神尾が、甚《はばはだ》しく不興な面をして、短冊をポンと抛《ほう》り出したものですから、鐚があわててこれを拾い上げて後生大切に袖で持ち、
「めっそうな! 大尽《だいじん》のお墨附! めっそうな」
仰々しく取り上げて、恨み面にじっと主膳の面を見上げていると、
「貴様の贔屓を受けている三一旦那とやらは、いったい何者だ!」
主膳が、怒鳴りつけるように一喝《いっかつ》したその調子が変ですから、鐚があわてて、逃げ腰になりました。
「三一旦那、当時舶来、エレキ屋の三一旦那! 大したもんでげす、商業界きってのお大尽でげす」
「貴様にとっちゃ旦那かお大尽か知らないが、その歌のザマは何だ、そんなものが、人に見せられるか、人を愚弄《ぐろう》するにも程のあったもんだ」
「イケやせんか、なっとりゃせんか、和歌の法則から申しますと」
「馬鹿、和歌も詩歌もあるものか、そんなものを、よく人中へ出したもんだ、こっちへよこせ、揉《も》みくちゃにして火鉢にくべてやる」
「じょ、じょうだんでげしょう、ドル旦のお大尽のお墨附! 愚拙が家の家宝――何とあそばします」
神尾の余憤は容易に去らない。冗談にしろ、和歌を持って来たから直してくれとか、評をしてくれとかいうことになると、なあに、この野郎がもたらすものだと軽蔑しながらも、その風流のやや向上気味なるを取らないでもないが、もたらしたその三一旦那《さんぴんだんな》の歌というやつが、茶漬にもならない代物《しろもの》だから、主膳もおのずから不興になったので、その不興が相当真剣になっているので、鐚《びた》も多少怖れている。
「そりゃ、あなた、お大尽と申しやしたところで、根が町家の商人のことでげすから、高家《こうけ》歌よみ家のようなわけには参りません、町人のお大尽でも、このくらいの風流があるというところも買っていただかなけりゃ。あなた、三一旦那は定家卿《ていかきょう》でも、飛鳥井大納言《あすかいだいなごん》でもございません、そう、殿様のように頭からケシ飛ばしてしまっては、風流というものが成り立ちません、第一、初心のはげみになりませんから、何とか一つ、そこは花を持たせていただきてえもんでござんして」
「黙れ黙れ! 言語道断の代物だ――笑って済むだけならまだいいが、見て嘔吐《へど》が出る、ことに、第五句のところ……」
「そこでげす!」
「そこが、どうし
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