えぬことによって充分に御賢察が願いたい――衣も足り、食も足り、懐ろ工合の方も、当節は異人館出入りのために外貨獲得てやつが成功いたしやして、至極豊かでござりやす、かくて最後に来《きた》るものが風流――その風流の御相談に参じやした」
「まあ、言ってみろ」
「拙《せつ》のお出入りの旦那に三一小僧《さんぴんこぞう》というのがござりやして、その旦那が近頃、和歌に凝り出したと思召《おぼしめ》せ」
「和歌――歌だな」
「いわゆる、みそひともじなんでげす。その旦那が次のような歌をお詠《よ》みになりまして、鐚、どんなもんだ、点をしてくれろとおっしゃる、内心ドキリと参りましたね、実のところ、鐚も十有五にして遊里にはまり、三十にして身代をつぶした功の者でげして、その間《かん》、声色、物まね、潮来《いたこ》、新内、何でもござれ、悪食《あくじき》にかけちゃあ相当なんでげすが、まだ、みそひともじは食べつけねえんでげすが、そこはそれ! 天性の厚化粧、別誂《べつあつら》いの面《つら》の皮でげすから、さりげなくその短冊を拝見の、こう、首を少々横に捻《ひね》りましてな、いささか平貞盛とおいでなすってからに、これはこの新古今述懐の――むにゃむにゃと申して、お見事、お見事、ことに第五の句のところが何とも言えません、と申し上げたところが、ことごとく旦那の御機嫌にかなって、錦水を一席おごっていただきやしたが、実のところ、鐚には歌もヌタもごっちゃでげして、何が何やらわからねえんでげす、後日に至りやして、三一旦那から再度の御吟味を仰せつかった時にテレてしまいますでな、どうか、その御解釈のところを篤と胸に畳んで置きてえんでございます。これがその三一旦那から頂戴に及んだ短冊でげして」
「そうか、貴様が贔屓《ひいき》になる三一旦那というのが和歌を詠んで、貴様に見せた、和歌の和の字も知らない貴様も、旦那のものだから無性に褒《ほ》めて置いたが、中身は何だか一向わからん、それで後日|糺問《きゅうもん》されると困るから、一応おれに見て講義をして置いてくれというわけだな」
「まさに仰せの通り――鐚儀、お弟子入り、お弟子入り」
「どれ見せろ」
と神尾主膳が、鐚の手から短冊を受取って、それを上から読みおろしてみると、
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かながはで、蒸気の船に打乗りて、
 一升さげて、南面して行く
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「何
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