とがガタガタするゆえ困ったら、久保島が石ころを紙に包んで入れてくれた故、知らぬ顔でいたが、二三月たつと知れて、兄きがおこったが(おこるのがあたりまえ)いろいろ論議をしたら、おれが出したと役所の小使めが白状しおった故、おれに金を出せとて兄きが責めたが、知らぬとて強情をはり通したが、兄が親父へそのわけを話したら、親父が言うには、手前も、年の若いうちに度々そんなことはあったっけ、僅かの金で小吉を瑕物《きずもの》にはできぬ故、何とか了簡《りょうけん》してみてやれと言った。そこで、いよいよおれが取ったに違いない故それきりにして、誰も知らぬ顔で納まった。おれはその金を吉原へ持って行って一月半ばかりに使ってしまったが、それから蔵宿《くらやど》やほうぼうを頼んで金をつかった」
[#ここで字下げ終わり]
いったい、その親共なり、支配頭なりが、厳しいのか甘いのかわからぬ。自分もやっぱり、この厳しいような、甘いような江戸の家風に育った一人だ。勝のおやじのためには、たしかにそれが子孫への教訓にもなるようなものだが、おれのはなんにも残らぬ、と神尾がやや自覚しました。それから読みついで行くと、いよいよ大変なもの
前へ
次へ
全356ページ中322ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング