黒いのが這《は》い込んで来ました。見ると、それが、さきほどの斎藤一です。忍び寄った斎藤は、この五人の鞘走りの一団へ近づいて、
「大石――」
「誰だ、斎藤か」
「来たぞ、来たぞ、いよいよ来たぞ」
と腹這いながら斎藤が言いました。
「来たか」
「それそれ、あの通り、得意満々たる千鳥足、御自慢の御紋章の提灯が何よりの目じるしだ、そらそら、今、そこをその板囲いの前を通る」
「御参《ござん》なれ!」
「やっ!」
と、大石鍬次郎が突き出した手練の槍、板囲いの間からズブリと出て、
「あっ!」
と、たしかに手答えがあった。表から見ると、無惨や伊東甲子太郎が、肩から首筋を貫かれて無念の形相《ぎょうそう》――血が泉のように迸《ほとばし》る。
「それ辰公――やっつけろ」
 首を突き貫かれて、よろめく伊東甲子太郎に向って、真先に板囲いの中から跳《おど》り出して斬ってかかったのは、元の伊東が手飼いの馬丁《べっとう》。
「隊長、済まねえが、わっしに首をおくんなさい」
「貴様は辰だな!」
 槍を掴《つか》んだ伊東の眥《まなじり》が裂ける。こいつは、先頃まで、自分が引立てて馬丁をさせて置いた辰公だ――八ツ裂きにすべき
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