それが本心であろうけれども、斎藤はあらかじめ近藤の旨を受けて、間者として高台寺へ入り込ませてあるのだという。その内状を山崎が聞いてなるほどと思う――
「して、こんなに遅く、伊東を案内してドコへ行ったのだ」
「それを話すと長いが、まあ聞いてくれ」
これもいい気なもので、御紋章の提灯を橋の一角に安置して置いて、もっぱら山崎を話敵《はなしがたき》に取ろうというものです。
四十七
斎藤一の語るところによると、今晩この男が、御陵衛士隊長伊東甲子太郎を送って、ここのところを通りかかった事情は次の如くでありました。
上述の如く、近藤の新撰組と、伊東を盟主とする御陵衛士隊とは、相対峙《あいたいじ》して形勢風雲を孕《はら》んだ。どのみち、血の雨を降らさないことには両立のできない体勢になっている。土方歳三が、ついに火蓋《ひぶた》を切って、
「高台寺の裏山へ大砲を仕かけて、彼等の陣営を木端微塵に砕き、逃げ出して来る奴を一人残らず銃殺すべし」
それを近藤が抑えて、
「何と言ってもお場所柄、それは穏かでないから、まあ、おれに任せろ」
というわけで、なるべく周囲の天地を驚かさないよう
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