「高台寺の屯所《とんしょ》へ帰るのか」
「そうだ、そうだ」
「そうして、今頃まで、どこで何をしていた」
と山崎から推問されると、斎藤と呼ばれた壮士は、提灯を持ったまま橋の真中に踏みとどまり、
「七条の醒《さめ》ヶ井《い》の近藤勇のところへ招かれて行ったのだ」
「近藤のところへか――そうして、連れは誰だ」
 連れはだれだと山崎から問いかけられて、思い出したように振返って見ると、もうその先導して来た一人は橋の上にいない。
「おや」
と思って見直すと、提灯持をそこに置きはなして、自分はもう前へ進んで、橋の詰の方へ酔歩蹣跚《すいほまんさん》として行く姿が見える。その主《ぬし》も酔っているが、提灯の斎藤も少なからず酔っている。同行のものを遣《や》り過ごしてしまっても、自分はまだいい気で橋上に踏みとどまって山崎と話し込んでいる。山崎もまた、いい気で問いをかけている。
「連れのあれは誰だ」
 その後ろ影を見やって、斎藤にたずねると、斎藤が高く笑って、
「君も知ってるだろう、伊東だよ、伊東甲子太郎だよ」
「ははあ、あれが伊東だったか」
「今は、伊東は大将なんだぜ、御陵衛士隊長と出格して、新撰組の近藤
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