ぱなしの、隔てのないものの言いぶりで、豪傑肌こそ昔に変らないが、殺気などというものは微塵《みじん》もない、真に己《おの》れも淋しいことあって、友を呼ぶ魂のように聞えるから、竜之助も極めて安心をしつつ、その追いつくのを待っていると、ほどなく近づいた右の豪傑は、竜之助を見て莞爾《かんじ》として笑ったかと思うと、竜之助の腕をとって、親しみの態度を現わしました。竜之助も手をさしのべてさわってみたが、その手は荒いけれども、そのさわりは極めてつめたい。
「いやに冷たい手をしているな」
「は、は、は」
「どこへ行っての帰りだ、そうしてこれからどこへ行こうというのだ」
「美濃の関ヶ原から来たんだが、これからまた京都へ行くのだ、京都はどこという当てもないが、せっかく君と同行のことだ、君の行くところへ僕も行こうではないか」
田中新兵衛は極めて親しみを以て、こう言いました。思えば自分も一人旅、逢坂山の関の清水を立ち出でて、足はこうして京洛の地に向いているけれども、さて、今度の都入り、誰を当てに、ドコへ落ちつこうという目的があるではないのだ。田中新兵衛から、こう持ちかけられてみると、竜之助はいまさら自分の行
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