たものだろう」
「心中者らしいのだ」
「心中者――今時、洒落《しゃれ》てやがるな」
「でもまあ、助かったから功徳《くどく》というものさ」
二人、会話をしているうちに、婆やが酒を運ぶ、茶菓を運ぶ。
それが話のきっかけになって、健斎は、どうしても道庵を田辺へ引っぱって行くと言ってきかない。
「田辺なんてところに、何かいいものがあるのかい」
「有るとも、大有りさ、一休和尚の寺がある」
「一休! 一休と聞いちゃ、聞きのがせねえよ」
と道庵が、いささかはずみました。山城の国、綴喜郡《つづきごおり》、田辺の里に、一休和尚の旧蹟|酬恩庵《しゅうおんあん》があることの説明を、健斎老が道庵先生に説いて聞かせた上、どうしても、これから道庵先生を引っぱって行って、大いに上方酒《かみがたざけ》を飲ませなければならぬ、と言い出したものですから、暫く思案した道庵が、忽ち同意してしまいました。
先に言うが如く、道庵が空虚を感じながら、ここを動けない理由の一つとしては、孤立無援で、味方のない敵地へ乗込むということの危険を予想したからである。ところが、山城生れの生粋《きっすい》の土地っ子で根の生えたやつが、自分の
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