るを得ない。これから再び取って返して、あのコースを行くのは、轟の源松の縄張中へ、わざわざ、からかいに出直すようなものであってみると、「なあに、タカの知れた田舎岡っ引に、がんりき[#「がんりき」に傍点]の年貢を納めるにゃ、まだちっとばかり早えやい」というつまらない鼻っぱりが出て、それでいささかむず痒《がゆ》くなって、せせら笑ってみたまでのことです。
 そんなことを知らない不破の関守氏から、まともに戒められて、がんりき[#「がんりき」に傍点]が、
「時に旦那、御注意万端ありがたいことでござんすが、突走れ、突走れとばかりおっしゃって、かんじん[#「かんじん」に傍点]の御用向のほどが、まだ承ってございませんでしたね。いったい、胆吹山へ行って、誰に会って何をするんでござんすか、ただ湖岸《うみぎし》を突走って、胆吹山へ行きつきばったりに、艾《もぐさ》でも取ってけえりゃいいんでござんすか」
「そこだ」
と不破の関守氏が少しはずんで、
「いいか、胆吹山へ着いたら上平館《かみひらやかた》というのをたずねて行くんだ、そこに青嵐《あおあらし》という親分がいる」
「ははあ――青嵐、山嵐じゃないんですね」
「よ
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