大菩薩峠
京の夢おう坂の夢の巻
中里介山
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)宵《よい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)町人|体《てい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+易」、第3水準1−84−53]
−−
一
同じその宵《よい》のこと、大津の浜から八十石の丸船をよそおいして、こっそりと湖中へ向って船出をした甲板の上に、毛氈《もうせん》を敷いて酒肴を置き、上座に構えているその人は、有野村の藤原の伊太夫で、その傍に寄り添うようにして、
「御前様《ごぜんさま》、光悦屋敷とやらのことは、もう一ぺんよくお考えあそばしませ、大谷風呂の方は、どちらへ転びましても結構でございますがねえ」
それは女軽業の親方のお角でした。
女軽業の親方お角さんは、今では伊太夫第一のお気に入りになっている。お角が伊太夫を御前様と称えてみたところで、あえてへつらうわけではない。伊太夫は伊太夫としての貫禄から言っても、
次へ
全356ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング