加納※[#「周+鳥」、第3水準1−94−62]雄
同    橋本皆助
同    毛内監物
同    服部武雄
同    中西昇
同    鈴木三樹三郎
同    藤堂平助
同    内海二郎
同    阿部十郎
同    富山弥兵衛
同    清原清
岡    佐原太郎
同    斎藤一
[#ここで字下げ終わり]
 右の人名表を二人は、一通り眼を通してしまうと、紙切れを山崎の手に戻す。それを指頭でひねりながら、山崎が語りつづける――
「事の順序として、伊東甲子太郎という男はどういう男であったか、それを説明して置こう。伊東はもと鈴木大蔵といって常陸《ひたち》の本堂の家来なのだ、水戸の金子健四郎に剣を学んでいる、芹沢と同様、無念流だ、江戸へ出て深川の北辰一刀流、伊東精一に就いて学んでいるうちに、師匠に見込まれて伊東の後をついだのだが、腕もあるし、頭もよい、学問も出来る、なかなか今の時勢に雌伏して町道場を守っていられる人間でない、髀肉《ひにく》の歎に堪えられずにいるところへ、近藤が京都から隊士を募集に来た。近藤は、兵は東国に限るという見地から、わざわざ関東まで出向いて募集に来たのだ。その時に伊東が一味同志を率いて、これに参加することになったのだ。その一味同志というのが、この表にもある名前の大部分で、鈴木三樹三郎は彼の弟である、中西昇と、内海二郎はその代稽古をしていた、これに服部三郎兵衛、加納直之助、佐野七五三之助、篠原泰之進ら八人が打連れて、近藤ともろともに京都へ上って行った、それがそもそも縁のはじまり。その伊東以下がここに至って、前に言う通りの事情と名分とを以て、首尾よく新撰組と分離を遂げてしまった上に、新たに『御陵衛士』の名目を得て、立派に一隊を組織して盛んに同志を募りはじめた」
「それを黙って見ている近藤でもあるまい」
「その通り――伊東が芹沢と同じような運命に送られるか、或いは新勢力が旧組を圧倒して立つかの切羽《せっぱ》になった。そこへ持って来て、伊東が分離した時に、同時に分離して御陵衛士に入るべくして入らなかった一団がまだ新撰組のうちに残っている、その面《かお》ぶれを挙げてみると、佐野七五三之助、茨木司、岡田克己、中村三弥、湯川十郎、木幡勝之助、松本俊蔵、高野長右衛門、松本主税といったところで、これがどうかして脱退したいと、ひそかにその機を狙《ねら》っていた
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