近藤勇
同  肝煎格 副長  土方歳三
見廻組  格     沖田総司
右   同断     永倉新八
同          原田左之助
見廻組        井上新太郎
同          山崎木一
同          緒形俊太郎
見廻組  並     茨木司
同          村上清
同          吉村貫一郎
同          安藤主計
同          大石鍬次郎
同          近藤周平
惣組残らず見廻御抱御雇入仰せつけられ候
 卯六月
[#ここで字下げ終わり]
 これを二人が、すらすらと読んでしまって、田中が、
「なるほど、こうなってみると、新撰組は残らず幕府の方へ、お抱え、お雇入れ、仰せつけられ、ということになったのだな、金箔附きの御用党となったわけじゃな」
「そこだよ」
「よく、これで納まったな」
「納まらないのだ、これで近藤は御目見得格《おめみえかく》以上の役人となり、大久保なにがしという名をも下され、土方は内藤隼之助《ないとうはやとのすけ》と改名まで仰せつけられたというわけだが――納まるはずがない、本人たちは一応納まったが、納まらぬのは多年の同志の間柄だ」
「そうだろう、一議論あるべきところだ」
「本来、新撰組というのが、幕府の爪牙《そうが》となって働く放漫有志の鎮圧を専門としているが、もともとかれらは生え抜きの幕臣でもなんでもないから、その御すべからざるところに価値《ねうち》があったのだ、彼等は事情やみ難く幕府のために働くとは言い条、彼等の中には勤王攘夷の熱血漢もあれば、立身の梯子として組を利用しているものもある、天下の壬生浪人として大手を振っていたものが、公然幕府の御用壮士と極印《ごくいん》を捺《お》されることを本意なりとせざるものがある」
「それはそうありそうなことだ、で、右のように彼等が役附いたとなると、当然それに帰服せざるやからの出処進退というものが見ものだな」
「そこで、一部のものに不平が勃発し、その不平組の牛耳が、今いう伊東甲子太郎なのだ」
「また新撰組が二分したか」
「いや、すんなりと二分ができれば問題はないのだが、新撰組の組織というものが決して脱退を許さぬことになっている、脱退は即ち死なりと血誓がしてあるのだ、近藤に平らかならざるものも、隊としての進退が決した以上、それに不服が許されない、脱退も許され
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