晒されてしまった。明日は三日目の「晒し」である。明日が終れば、「晒し」の方はこれでおゆるしになるが、その代り生命の方を召されてしまう。
さて、こうして二日間、誰ひとり助けに来ようという者はない。貰い下げを歎願に来ようという者もない。また、多数の威力でデモを以て奪還を試みようとする勇気もない。
それもまたそのはずです。この晒し者に限って、所番地というものが更にわからない。単に「農奴」としてあるだけで、何の郡の、何村の農奴に属するのだか、その人別が書いてない。書いてないだけではない、事実、いずれの村の農奴だか、この騒ぎの中で誰ひとり見知ったものがないのだから、徒《いたず》らに面食うのみで、同情を表したくも表するきっかけがない。
そこがまた、役向の見つけどころかも知れません。
さて、その日の夕方になると、縛られている米友の前へ、二人のひにん[#「ひにん」に傍点]がやって来て、無遠慮に穴を掘り出しました。三尺立方の真四角な穴を掘りにかかりました。
「おい、兄い、よく見て置きな、明日になると、お前のその笠の台と、胴体とが、上と下への生き別れだよ――首が落っこっても痛くねえように、土をやわ
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