、天下の高味《こうみ》、文明開化の食物――」
 のだいこまがいの金公は、下級|戯作者《げさくしゃ》のたわごとを受売りするように安っぽい通《つう》がりで給仕を催促する。
 神尾主膳は不興満々でそれを見つめていましたが、ふと眼をそらすと、一方のその六尺もある大きな鏡です。その鏡へ、こちらを向いてベチャクチャとしゃべっている金助の後ろ姿がほとんど全部うつし出されて、本人が動けば、ちょんまげまでも動くのがありありとわかるのに、神尾主膳はちょっと興を催して、その鏡面をつくづく見ているうちに、自分のいずまいをちょっとくずすと、その鏡面へちらりと――自分の面《かお》が、三つ目のあるその面がちらりと映ったので、またグッと不快の念が萌《きざ》して、その面を引込めるなり、苦りきってしまいました。

         七十一

 ところが、ここにはたった二人だけれども、支那人のよそおいをした給仕が、次へ次へと持ち運ぶ皿の数は、ちょうど椅子の数と同じことなのです。そうして、椅子の排列通りに卓子《テーブル》の上へ、それからそれと並べて行ってしまうのを変だと見ていると、また一人の給仕は、ぴかぴか光る銀ずくめの箸《
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