つの疑問に襲われたのは、「繊々たる初月」ということには何の異議もないが、「鴉黄に上る」というあとの半句が解しきれなかったのです。
鴉黄というのは何だろう。鴉という字はカラスという字だから、鴉《からす》がねぐら[#「ねぐら」に傍点]に帰り、空の色がたそがれで黄色くなる時分に、新月が上り出したという意味ではないかと、最初のうちは漠然と、そんなふうにのみ解釈していましたが、そのうちに、お銀様の研究癖が、単にそんな当て推量では承知しなくなりました。
そこで、書物庫へ入って古書を引出して取調べをはじめたことです。調べがすんでみると、全く予想だもしなかった意義と歴史とを発見することができました。鴉黄というのは、鴉のことでもなければ、黄昏《たそがれ》のことでもない。それには、想い及ばなかったところの濃厚な意味が含まれていると共に、お銀様の反抗心を、また物狂わしいものにしたところの、歴史上の重大なる描写と諷刺とのあることを、あの詩全体から発見するに至りました。
あれは申すまでもなく、盧照鄰《ろしょうりん》の「長安古意」の長詩の中の一句でありますが、何の意味となく誦していたところのものと、新たに取
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