てお医者があるそうじゃございませんか」
「なにチュウジョウ――そんな医者は知らねえ、そりゃたくさんの藪《やぶ》の中には、そんな筍《たけのこ》もあるかも知れねえが、いちいち姓名は覚えちゃいられねえ。チュウジョウ――おいらの近づきにゃ、そんな……待ちな、ああそうか、チュウジョウじゃねえ、ナカジョウだろう、中条と書いてナカジョウと読んでもれえてえ、あれだろう、字は同じなんだが」
「そんならナカジョウですか、あれは何をするお医者なんでございますか」
「驚いたね――中条というお医者は何をするお医者さんだと、年頃の娘さんから赤い面《かお》もしないで……反問されようとは予期していなかった」
と道庵は、眼をギョロギョロさせて、気味の悪いほど、しげしげとお雪ちゃんの面をながめましたから、その時に、はじめてお雪ちゃんが少々恥かしい気になりました。
「お雪ちゃん」
道庵はとぼけたような、とぼけないような面をして、とろりと――お雪ちゃんの面をながめながら、
「お雪ちゃん――お前さんは」
「先生、そんなに、わたしの面ばっかりごらんになってはきまりが悪うございます」
「いいんや、こっちがかえって面負けなんだ。だ
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