てならないこともあるのでございます」
「なるほど、そりゃあ――そりゃ話が元へ戻るが、元へ戻るほど根が太くなる!」
と道庵が言いました。元へ戻るほど根が太くなるという言葉だけは論理に合っているのですが、道庵が何のために突然、右様な論理を持ち出したのか、そのことははっきりしません。ただ、単純に樹木にしてからが、根元へ来るほど太くなるという現前の事実が平明に突発してみたのだか、或いはお雪ちゃんの提出した根本問題が、ようやく重大なるものに触れて行くことを怖れたのだか、その辺は相変らずハッキリしないものであるが、多少の狼狽気味は隠せないものがあるようです。実は前々お雪ちゃんから左様な、性と生との根本問題をかつぎ出されていちずに共鳴感奮してみたものの、この問題をあんまり深く追究されると、自分の焼刃が剥げることの怖れから、冗談に逃げていたのを、また引戻されて押据えられる苦しさに、道庵がうめき出したようにも聞きなされたが、道庵先生ほどのものが、たかが小娘のお雪ちゃんにあって、その鋭鋒を避けなければならんというような、卑怯未練な振舞はあるべきはずはないのです――果して、陣形を立て直して道庵先生が、しかつ
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