雪ちゃんも、少しきまりが悪い思いをしながら、
「あの、関守さん、この先生は、米友さんの御主人でございまして、お江戸から上方《かみがた》への御旅中なのですが、昨晩、米友さんがお連れ申しました」
「は、さようでござるか、それはそれは」
「わっしぁ、道庵でげす、なにぶんよろしく」
 道庵先生が、すっかりすまして、まだ面《かお》も洗わないのに炉辺へ納まり込んでしまいました。
 ここで、関守氏と道庵先生に話をさせたら、また一市《ひといち》栄えるだろうと思われたが、そこはおたがいにまだ生面《せいめん》のことではあり、さすが話好きの関守氏も、これを機会に御輿《みこし》を上げて立帰ることになると、お雪ちゃんが、
「では、関守さん、またおひまを見ていらっして下さいまし」
とお雪ちゃんは、余情を残しただけで、強《し》いて関守氏を引きとめようとはしませんでした。
「では、さようなら」
 関守氏は入って来たトンボ口の方から出て行ったが、暫くして南表広庭の方へ廻ったと見えて、そこで誰を相手にともなく、こんなことを言い出したのがよく聞えました、
「弁信さんにも困ったものでねえ、この騒ぎの中を出かけましたよ、竹生島
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