うと、もうかなり時がうつりました、それではそろそろ長浜へ向って出かけることと致しましょう」
と言って、木の枝に程よく吊《つる》した提灯《ちょうちん》を取下ろすべく、賢母が腰を上げて手をのばしました。
 賢母が提灯を手にとろうとすると、その後ろで不意に、
「ホ、ホ、ホ、ホ」
と笑う声がしました。
 三人が言い合わせたようにそちらをみやると、水門の水口《みなくち》のところに、腰打ちかけてこちらを向いている一人の白い姿があるのです。
 最初は絵に見る関寺小町《せきでらこまち》とか、卒塔婆小町《そとばこまち》とかいうものではないかと怪しまれたほど、その形がよく画面に見えるそれと似通っておりました。
 無論、女です。白い着物の裾を長く曳《ひ》いて、白い帯に、白い頭巾で、目ばかりを出して、不意に「ホ、ホ、ホ、ホ」と笑いかけたものですが、その笑い声がいかにもやわらかで、そうして美しさと、若さを含んでおりました。
 卒塔婆小町? と疑ったのは、その姿を見た瞬間の印象だけでして、その声を聞くと、どうして、ずっと若い、美しい水々しさを持っていることに於て、やはりその頭巾の中の主も、声と同じような若さと、美
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