を押開いている。そうして四囲の山が赤外線で引立てたように、常日の眺めとは一層に峻厳に湧き立っているので、琵琶湖そのものが、さながらアルプス地帯の山中湖を見るように澄み渡り、このそそり立つ四囲の山々、谷々、村々、里々は、呼べば答えんとするところに招き寄せられている。
沖の島、多景島、白石――それから竹生島《ちくぶじま》の間も、著しく引寄せられて、長命寺の鼻から、いずれも飛べば一またぎの飛石になっている。
比良も、比叡も、普通見るところよりは少しく四五倍の高さを増して、手をつなぎ合ってこちらへ当面に向っている。堅田の御堂も、唐崎の松も、はっきりと眼の前に浮び上って来ている。
三井、阪本、大津、膳所《ぜぜ》、瀬田の唐橋《からはし》と石山寺が、盆景の細工のように鮮かに点綴《てんてい》されている。
針のように、そこに突立っている物影は、これらの四周の山水を見めぐらすのでなく、眼前の大スロープが湖水へ向って辷《すべ》り込もうとするある一点に眼を注いでおりました。他の部分の山川草木はすべて眠っているのに、そこばかりは夥《おびただ》しい火だ。家々の軒が火を点じているのみではない、町々、辻々には
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