がん》として下りませんでした。
「よします、お前さんが、いけないと言うものを強《し》いてお頼みはしません」
「うむ」
「じゃ、米友さん、ここへ泊めて頂戴」
「うむ」
「いいの?」
「うむ」
「ここならいいの?」
「うむ」
「奥の間ではいけないけれども、ここへなら泊めて下さるの?」
「うむ」
「まあ、有難う、では、ここへ泊めていただくことにして……」
お銀様は、覆面の中から米友の面《かお》を、まともに見つめました。睨《にら》むのと同様です。さすがの米友も、真向きに見られて、まぶしいような、テレ臭いような、小癪《こしゃく》にさわるような気分に迫られたけれど、どうも今晩は、今晩だけではないが、この女に対しては、そうポンポン啖呵《たんか》がきれないのです。といっても、それはお角さんに対する時のように、妙にすくんだ高圧されるような意気込みで、たんかがきれないのではなく、この女王に対しては、何とも言えない、一種の親しみを感ずるような点から、米友がテキパキと、そっけなく片づけきれない何物かがあるのです。
「ねえ、友さん」
「うむ」
「じゃ、もう一つ頼みがあります、聞いて下さる?」
「うむ――」
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