ですから、蒲団を持ちながらハッとしました。

         二十四

 鷲の子のまたしても不意に、今度は以前より一層また慌《あわただ》しく、けたたましくはばたきをやり出したのに驚かされたのは、お雪ちゃんばかりではありません。
 米友も屹《きっ》となって、その時、鷲の子のはばたきのした方向よりは、ふり仰いで自分のいる天井の上を見上げたのです。
「お雪ちゃん」
「何です、米友さん」
「何か来ているぜ」
「おどかしちゃいやよ、友さん」
「おどかしじゃねえ、何か来ているんだよ、この上の方に、てんまる[#「てんまる」に傍点]じゃねえかな」
と言って米友は、天井の上を屹と見上げたままです。その途端に、鷲の子のなお一層はげしいはばたきの音が、連続的に響いて来る。お雪ちゃんは、そのはばたきの音の方だけが気になるが、米友はかえって、それとは別角の天井の上を首の疲れるほどながめ、且つ耳をすましながら、
「ほら、お雪ちゃん、お聞き、この上の方で、もう一つはばたきの音がするだろう、あれ、木を食い切るような音が――」
「ほんに……」
 お雪ちゃんは耳を傾けると同時に、楯《たて》を裂くような、何とも言えない強
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