な小粒の柿の実を、お上品に皮を剥いたり、四ツ割りにしたりして、しとやかに口中へ運ばせるなんていうことはガラにないのです。米友に柿の実をあてがって置いて、お雪ちゃんが、
「友さん――お前に聞きたいと思っていましたが、あのお嬢様という方は、いったい、あれはどういう方なのですか」
柿の実で買収して置いて、それから探訪の鎌をかけようというお雪ちゃんの策略でないことはわかっているし、米友とてもまた、昔噺《むかしばなし》の主人公と違って、柿の実や、握飯の一つや二つで買収される男ではないにきまっているが、つまりお雪ちゃんは、この機会に於て、このあたり静かな、そうして、後ろには山形雄偉なる胆吹山が傲然《ごうぜん》として見張りをしている、新開墾地の人無きところで、日頃から尋ねんと欲して尋ね得なかった腑《ふ》に落ちない条々を、この人によって解釈してみたいと念じていた希望が、偶然ここへ現われただけのものでしょう。
「うん――あれはね」
米友の返事は存外|素直《すなお》に出ました。うっかりよけいな質問をかけて、ぴんしゃんハネつけられないのが見《め》っけものと、お雪ちゃんとしても、多少|危惧《きぐ》してかか
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