えてばかりいやがるな、だが、いつか、絶滅する時があるよ、人間てやつが、一人残らずやっつけられる時がある」
「せっかくですが、やっぱり殖えるばかりで、減る様子は見えませんね、殺し合っても殺しきれないんです――人間以外の力だってそうです、幾世紀に幾度しか来ない、戦争や、天災だって、一時に十万の人を殺すことは、めったにありませんからね。そのほかに、この人間力に対抗するような力が、ちょっと見出されないじゃありませんか。いったい、何が人間を亡ぼしますか」
「この土と水とがすっかり冷たくなって、コケも生えないような時節が遠からず来るよ、苔《こけ》が生えないくらいだから、人畜が生きられよう道理がない、その時まで待つさ」
「誰がその時節到来を待ちたいと言いました、そんな時代をわたしたちは想像したこともないのです。ごらんの通り、地上には人の要求する何十倍もの食料を与えるところの穀物が生えるのです、土が人間を愛するから、それで食物に不足はありません、私たちは、生きて、栄えて、整理して、防禦して、それで聞かない時は討滅して、力の権威をもって、自分に従わないものをどしどしと征服して行くのです。そういう意味に於て絶対の暴虐が許されます。あなたなんぞは明るい日の目を見ることが出来ないで、仮りに十日に一人、月に五人の血を吸って辛《かろ》うじて生きて行く間に、私たちは土を征服し、人間をことごとく自分の理想の従卒とし、牛馬として使って行くのです、愉快じゃありませんか」
「ふふーん、そういうのは征服じゃない、自分が多くの有象無象《うぞうむぞう》の生きんがための犠牲に使われ、ダシに使われているのだ、英雄豪傑なんていうものと、愚民衆俗というやつの関係が、いつもそれなんでね。要するに人間というやつは、自分たちの、無用にして愚劣なる生活を貪《むさぼ》りたいために、土地を濫費《らんぴ》し、草木を消耗していくだけのことしかできないのだ、結局は天然を破壊し、人情を亡ぼすだけのことなのだ。開墾事業だなんぞと言えば、聞えはいいようだが、人間共の得手勝手の名代《なだい》で、天然の方から言えば破壊に過ぎない。人間共のする仕事、タカが知れているといえばそれまでだが、あまり増長すると、天然もだまってはいない、安政の大地震などは、生やさしいものだ、いまにきっと人間が絶滅させられる時が来る。天上の天《あま》の川《がわ》がすっかり凍
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