で持っている――その極《きわめ》はいよいよ本格的となって、今日までも動かせないでいるのだが、果して、それが無条件でそのまま受取れるか。
母は、もとより父のように品行上の欠点はなかった。品行上の欠陥がないということは、世間的には、すべての性格的の欠陥を帳消しするのと同じ理由で、品行上に些細《ささい》な欠陥でもあれば、他の性格的にどんな美点善処があろうとも、たいてい葬られてしまう。品行上では箸にも棒にもかからなかったわが父が、性格的には全く欠陥ばかりであったろうか。何かしら、認められないところに良処はなかったか。父は世間からは悪評判で葬られていたが、友人間ではむしろ敬愛される性格と趣味とを持っていたようだ。母はそれに引きかえて、第一、性格に潤いというものがなかったようだ――それから……
母が、世間に言われているような賢婦人だったら、父をあんなにはしていなかったのではないか。よし、父を救うことが絶望だとしても、自分をこんなにしてしまうまでのことはなかったのではないか。
自分は、今となって、母の再吟味に続いて、多くの遺憾《いかん》な点を見出す。それと共に、父の性格に、何か埋もれているとこ
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