よいよそれに相違ない。駕籠脇について来たのは仙台名代の親分で仏兵助という者――ここで一行が暫く休んでいるうちに、兵助親分が、「おとっさん、あの駕籠の中へ、温《あった》けえうどんを一ぺえ、くれてやってくんな」というような情けを見せたのが仇となったようです。
 うどんを一杯、駕籠のところまで持って行ってやると、そのうどんを食べるには、どうしても小手をゆるめてやらなければなりません。
 兵助親分にしてみれば、なあに、俺がついている――いいようにしてやれというはらがあったので、うどんを口へ運ぶだけの手のゆとりを許したものらしい。
 そうすると、非常に有難がって、旨《うま》そうにそのうどんを食べてしまったが――食べてしまうと丼《どんぶり》の中に、どうして入れたか小判が二枚あったそうです。
 誰が丼の中の二枚の小判を最初に認めたか、それはわからなかったが、とにかく、非常に神妙に、丁寧に、一椀のうどんにお礼を言ってしまってから、あとの願いがまことに申し兼ねたことですが、用便がいたしたいということでした。
 それは兵助親分の同意を得たわけではないが、誰か近くにいた目明《めあか》しのお目こぼしで、駕籠か
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