もいいが、市場連を助けてやりてえもんじゃのう」
「一骨折っちゃ、どうでごんす」
「さあ、当番でなけりゃ、何とか一肌ぬいでみようがなあ、いったい、手がかりはあるのかや、物怪変化《もののけへんげ》が、木の葉をもって買いに来たわけじゃあるまいからのう」
「物怪変化じゃねえさ、ちゃんと世間並みの鳥目《ちょうもく》を払って、小豆と、お頭附きと、椎茸《しいたけ》、干瓢《かんぴょう》の類を買って行かれた清らかな娘《あま》ッ子《こ》じゃげな――払ったお鳥目も、あとで木の葉にもなんにもなりゃせなんだがな」
「小豆と、お頭附きと、椎茸、かんぴょうを買うて行ったんや、何かお祝い事じゃろう」
「どんなもんじゃろう」
「わしゃ思いまんなあ、その娘ッ子、山家《やまが》もんじゃごわせんぜ」
「だが、合羽、かんじき、すっかり山家者のいでたちじゃったということじゃ」
「でも、山家者なら椎茸なんざあ買いやしませんがな」
「はてな」
「木地師《きじし》の娘ッ子じゃござらんか」
「木地師の娘ッ子なら、たんと連れ合うて来るがな、一人で来るということはごわせんわい、それに、木地師の娘ッ子ならお尻が大きいわいな」
「土地ッ子ではな
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