くほど見てやったが、全くいいザマではあったが、小癪にさわることには、その坊主共が、曝し物のくせに、イヤに男っぷりがのっぺりしてな、あいつは蔭間《かげま》だろうと見物が言っていた」
 それから急に胸が悪くなったが、いっそ胸の悪くなったついでに、一番、その蔭間というやつを、おもちゃにしてみてえ。
 今でこそ、蔭間は法度《はっと》になっているが、そこは裏があって、吉町へ行けば、古川に水絶えずで、いくらでも呼んで遊べる、ことに、この金筒のお倉婆あ、その方に最もつて[#「つて」に傍点]があるとのことだから、やって来たのだ、金公、貴様お倉婆あと相談して、よきに取計らえ――と主膳が言う。
 それを聞いて、金公が心得たりと小膝を丁と打ち、呼べる段ではない、この金筒のお倉婆あこそは、今は蔭間専門を内職とし、ここへ申しつけさえすれば、到るところに渡りがついていて、舞台子、かげ子、野郎の上品下種《じょうぼんげしゅ》、お望み次第だということ、その来歴、遊び方、散財の方法なんぞを、心得顔に並べるのがうるさく、神尾は、ちょうど傍へ来合わせた三毛の若猫を取って、それを上手に投げると、得意になって振りたてていた金公自
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