つものっぴきならぬ義理にせめられて、ついつい鞘《さや》を割らねばならぬようになって行きます」
「なんにしても、よくよくの御事情とお察し申します、そういうわけでしたならば、こちらは閑静でよろしうございますから、ゆっくり御逗留《ごとうりゅう》なさいませ」
「はい、お言葉に甘えましてしばらくかくまっていただきたいと、それ故こうして不意に参上いたしました」
「よくおいでになりました、いずれくわしいことはのちほどお伺いいたしましょう。では伊津丸の病床へ御案内をいたしましょう」
と言って銀杏加藤の奥方は、立ってこの美少年を案内して、病床に親しむ自分の弟の座敷まで連れて行きました。
八畳の一間、そこに静かな敷物がある、部屋の飾りも落着いて、卑しげがない。
正面に「南無妙法蓮華経」の髯題目《ひげだいもく》の旗がある。
「伊津丸《いつまる》」
「はい」
「梶川様が岡崎からお越しになりました」
「おお梶川殿」
と、寝返りを打とうとするのを押止めた梶川は、
「そうしていらっしゃい、あなたがそんなに御病気で休んでおられるということを、つい存じませぬ故、お見舞も致さず、失礼しました」
「いえいえ、失礼はこち
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