よ」
「はい、わたくしも、そのことばかり願っておりますのよ。あの殿様は、今の時世にはエラ過ぎるので、ああして隠れていらっしゃいますが、やがて、世にお出なさる時は、どんなにめざましいことでしょう。その時になって、駒井のひとり子があのザマだと言われては、わたしの恥にもなりますから、きっと立派な方に育ててお目にかけるつもりでおりますと、そのことをよく殿様にお取次ぎ下さいまし」
「あ、わかった、わかった、いい心がけだ、お松さん、お前の心がけには感心した、世間の女房と娘に、その心がけの百一さえあってくれりゃあ、こんなことにはならねえのだ」
「何をおっしゃるのです、おじさん、それではあんまり愚痴っぽく聞えてしまいますよ」
「ハ、ハ、ハ、自分のことと、人様のこととを取交ぜて考えるものだから、つい……これを見るにつけてもなあ、お松さん」
「はい」
「こんな血統の立派な、胤《たね》の正しいお子さんにしてからが、やっぱり親の手を離れて置くと、どちらにも心配があるというものだ、ロクでもねえ百姓の倅《せがれ》の、馬鹿野郎のガキでも、親となり子となれば、それを思う人情には変りはねえというものだから……あの与八な
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